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Modest Comments on contenporary politics by Akai OHI (Twitter:@AkaiOHI)。
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肯定と希望の政治

米国ワシントン連邦議会には、歴代大統領の就任演説集がおみやげとして売られている。就任演説は新大統領の目玉、いずれも米国史をふんだんに織り込んだ修辞溢れる名文で、たしかに金出して買う価値ありと感じた。歴代日本首相の所信表明演説集を永田町で売ったところでどれだけ買い手がいるだろうか、とも。


オバマはかつて、誰もホワイトハウスを「持ち家」にすることはできず、自分は時限契約の「借家人」だと言ったことがある。果たして、1月20日、白亜館の家主が入れ替わった。


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トランプ大統領就任を目にして、オバマ時代をノスタルジックに回顧する論調が出てくるだろう。私もその一人です。この8年間、オバマの演説は第一級のシティズンシップ教育の教材であった。また、英語教師として3年間、視聴覚教材としてオバマの演説には本当にお世話になった。


オバマの魅力は、①権利行使の重要性の絶えざる想起、②デモクラシーの伝道、③「アメリカ合衆国」をめぐる卓越した鋳直し、であろう。

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第一に権利行使の絶えざる想起。

オバマほど「独立宣言」を自分有利に引用した政治家はいない。権利は神が天から与えたが、大事なのは我々自身がそれをこの地上で実現すること。宣言されてるから安心するな、実行しろ、と。日本の政治家は義務を強調するが、米国はその真逆であり、オバマは大統領自らがアメリカ国民に日々権利を行使せよ、という。「権利の上に眠るな」という丸山真男の言葉を米国では大統領が実践している。


第二に、デモクラシーの伝道者。

オバマの演説が一番光るのが、アメリカにおけるデモクラシーを論じた時で、オバマの得意分野といえる。

オバマの功績は、デモクラシーの偉大さを説く点では決してない。デモクラシーのジグサグさ、つまらなさ、手間、妥協に費やす労力、喧しい不和や対立など、いわばデモクラシーの非効率を説くことであり、それでなお/だからこそデモクラシーをあえて選び取るべき理念を米国民に周知喚起した点にある。


それはトランプ当選に失望する若者たちへのメッセージにも現れている。いわく、民主政治は一直線では進まない。常にジグザグ、一歩前進二歩後退を繰り返す。デモクラシーは騒々しく時に罵り合う。そして、「それでいいんだ(that’s OK!)」、いや、そうある「べき」である。だから若者よ、一時の失敗で挫かれるな、常に勇気づけられていろ、冷笑屋になるな、と。


第三に、「アメリカ合衆国」をめぐる鋳直し。

米国政治のダイナミズムは、「アメリカ合衆国」という言葉で何を表すか、その定義をめぐる激しい角逐と競合によって生じる。米国政治に参入する誰もが、「アメリカ合衆国」を相手から奪還し、自分の理想とする形に鋳りあげ、自分の好む色に塗り替え、自分の理想を実現するプロジェクトにしようとする。


オバマは「アメリカ合衆国」の定義をめぐる闘争の稀代の名手だった。例えば有名なセルマ演説。1965年のセルマのデモ行進者を梃子に、思いもつかぬほど強力に「アメリカ合衆国」の意味を反転させる。「人種差別に起ち上がる市井の行動者以上に、アメリカ合衆国の真髄そのもの示す人々がいるか?」と。


もちろん、「アメリカ合衆国の真髄」など誰も決められない。KKKがアメリカの真髄だということも可能だろう。オバマはそれを知っていながら、それであってなお、セルマの行進者を力強く「アメリカの真髄」だと定義し切っているのである。


「アメリカ合衆国」はあなた次第でどうにでもなる、どんな形にも、どんな色にも。「アメリカ合衆国」の意味を、相手に勝手に定義づけられるのではなく、時の流れのまま惰性で漂流するでなく、自ら望む形に鋳り直し、練り上げていく手腕に感服したこと多々であった。


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総じて、オバマの政治は「肯定と希望の政治」だったといえよう。

アメリカの民衆を褒め、勇気づけ、元気づけ、力を漲らせ、失敗した時は「打たれ強さ(resilience)」を思い起こさせ、そうやってシニシズムを克服した。


それはいわば、「褒めて育てる」政治だった。米国民は変えられる。なぜなら先人は変革してきたから。進取の精神で国を変えよう。あなたは、我々はそれができるという肯定と希望のメッセージを送り続けた。Yes we canからYes we didへ。


私も大いに勇気づけられた。

ありがとう、さようなら、オバマ。


President Obama Full Speech on Donald Trump Win



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by akai1127ohi | 2017-01-22 10:18 | 政治時評 | Comments(0)

「絶望の文化左翼」と希望を語れる文化

昨年(2016年)読んで一番面白かった本は、R・ローティ『アメリカ未完のプロジェクト(Achieving Our Country)』(1998)でした。9月の米国NY訪問に携行した本だが、現在の広義の「左翼」の状況を的確に活写した本で、幾度となく膝を叩いて読んだ。

サイード『知識人とは何か』に影響を受けた20代の私は、それゆえ直情径行的な批判的知性を憧憬(しそれなりに実践も)するものだった。

ローティを面白く感じる30代の私は、やや皮肉交じりにリベラルな立場を逸脱しない、そんな立場でこれから40代に向けて人生の中堅に足を踏み入れるのではないか、という予想もした。

ローティの哲学方面には明るくないが、その政治センスで秀逸なのはやはり、文化左翼に対する(相手をよく知った)批判と、皮肉屋ながらその精神の芯のところで改良主義左翼の足場をしっかり守り、読者を sober にさせるまじめさです。

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驚くほどリアリティを持った描写として膝を打つのは、たとえばローティによる「文化左翼批判」。

「わたしがこの講義の初めに述べたのは、多くのアメリカ人の学生と教師の中に、自分たちの国を完成することを夢見ている<左翼>よりも、むしろ自分たちの国を傍観者のように嫌悪感を抱いて嘲笑している<左翼>がいるということだった。これが私たちの国の唯一の左翼ではないが、もっとも顕著に声高に主張している<左翼>である。……この<左翼>のメンバーたちは、自分たちの国から一歩退き、自分たちの国を『理論化(theorize)』する。……つまりこの<左翼>のメンバーたちは、現実の政治よりも文化の政治を優先させ、社会的正義にかなうように民主主義の制度が創り直されるかもしれないという、まさにそのような考え方をばかにする。そうして彼らは希望よりも知識を優先させる」(pp. 38‐9)。

ことほど左様に、米国でも恐らく日本でも、「絶望は<左翼>の側で流行」になってしまった。

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かつて改良主義左派は、共産主義者との関係で、その態度が「改良に留まる」ことを批判されたが、今や改良主義左派は、文化左翼との関係で、社会を「改良=良くしよう」とすること自体を批判されている。

かつて改良主義左派は、その態度が微温的な改良に「留まる」ことを批判されたが、今や改良主義左派は、改良に「足を踏み出そう」とすることを批判されているのである。

安易な希望を持つな、現状認識はなるだけ悲観的でいろ、民衆に希望を与えるものを疑え、現状のわずかな肯定的変化よりもそれによって「見えなくなるもの(なにそれ?)」に目を向けろ――と。

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絶望していることが「文化左翼」の知性に仲間入りするためのパスポートである。
少しでも希望を持つと、対象を「肯定的に」語ると、政治に賛意を示すと、「悲観主義が足りない」として批判される。「希望を持つこと」は文化左翼からの離反であり、転向声明になりうるから。だからこそ、少しでも希望を求める内心の発露に対しては「知性の悲観主義」が浴びせられる。「希望の発露」に対して、誰かが「悲観のタガ」をはめ直す。

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とはいえ、文化左翼のなかにも、「恥ずかしがりやの希望主義者」はいる。絶望のスパイラルゲームにいい加減閉口すると、フェイスブックの「嘆息の共同体」のなかから出て来ようともする。それゆえ、文化左翼の変容は、希望を持った時に始まる。

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何に対しても「自動的に」批判的態度をとることと、批判主義的精神は違う。政治を何もかも批判することとPCとはまったく似て非なるものである。

現状に対する批判的視点を提供する点で、文化左翼は必要だろう。

とはいえ、文化左翼の絶望が、左翼の内側から生じる希望と期待、何かを肯定的に論じ、何かに望みを賭けてみる姿勢を「摘み取る」機能に特化する時、おそらく文化左翼の自己閉塞が始まる。

2017年は、つとめて内側からの希望を逞しく語れる文化を作りたいものです。
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by akai1127ohi | 2017-01-01 10:03 | 散文 | Comments(0)
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