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Modest Comments on contenporary politics by Akai OHI (Twitter:@AkaiOHI)。
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山田洋次・武士三部作

男と女、武士と農民、刀と鉄砲……三作品のすべてがこの二項対立の組みあわせで作り上げられており、よくもこれほどワン・パターンの映画を三つも作ったものだと感じ入った。ある種の義務感から見終えたというのが率直なところです。

1、「たそがれ清兵衛」(2002年)

憲法第9条の平和主義に人類史的なナショナル・アイデンティティを見出すことを課されたこの国で、「武士文化」をどのように受けとめるかは、悩ましい問題である。

侍好きの黒沢明に対して、「お前が武士なら俺は農民だ」と向こうを張った佐藤忠雄にしてみれば、「山田、お前もか」というのが実情ではないでしょうか。江戸時代の人口の9割が農民だった以上、原監督も「サムライJapan」ではなく「農民Japan」とすべきだったように思います。

2、「隠し剣・鬼の爪」(2004年)

「たそがれ」、「武士の一分」の二作が、藩命による斬人、女がらみの斬人であるのに対し、これのみがある種の「公憤」による斬人と解釈される。

「死に物狂い」というべき人間の目は、決して、出世欲や名誉欲といった、自分だけの欲求からは到達できないだろう。自分だけの利益に基づいて頑張っても、大事は達成されない。自分以外の多くの他者の悔しさや怨念を背負って、それらに否応なく背中を押されるようにしてではないと、「死に物狂い」の人間の目にはなれないように思います。

3、「武士の一分」(2006年)

三部作のなかで最もプロットが陳腐なうえ、歯の浮くごときステレオタイプな男女本質主義に貫かれている。山田洋次でこのレベルなら、日本の時代劇はいまだ『チャングム』を描きだす才能には程遠いといささか絶望的な気持ちにもなった。

武士描写にしてもそう。さしたる理由もないまま刺々しく怒鳴り、あげくの果てにそれを「男らしさ」と勘違いしている人間は、私が最も近寄りたくない種類の人間像です。「韓流」ドラマの男たちに見られる強い自制心、忍耐力、内に秘めた尊厳と、それに裏づけられた優しさ、年配者への礼譲……。木村拓哉に、それが表現できていたとは思えません。

ちなみに「ぴあ映画生活」の採点によると、「たそがれ清兵衛」が77点、「隠し剣・鬼の爪」が73点、「武士の一分」が67点となっており、私の実感に近い。

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先日の「朝日」投書欄で、「抑止力」の名の下に沖縄の米軍基地を合理化する日本人の論理を、「武士に親を手打ちにされた農民がその武士に自分を守ってもらうようなものだ」とする意見があって膝を叩いた。鳩山が日米同盟という「パンドラの箱」を開けたことによって、日本の「従属的側面」が如実にあらわになっている。「農民の一分」が明確に自己主張してもいいはずだろう。
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by akai1127ohi | 2010-05-26 13:36 | Comments(0)

2010年イギリス総選挙へ向けた観察:最終回

夜テレビを目にした際は、まだLib Demsと保守党の政権協議が続いていて、労働党との連立の可能性も残されていた。朝、目覚まし代わりのBBCで、キャメロンがDowning 10に入っていく映像がおぼろげに見えた。

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Hung Parliament の結果が出てからおよそ一週間、明文憲法の規定がないため、各政党の代表者たちは議会権力の帰趨をめぐり、彼らがnational interestと呼びあらわすもの――持続的な政権、株価の安定など――を傍らに意識しながら、どこまで自己主張していいか、どこまで自己抑制すべきかを、互いに見定めていたような印象だった。



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政策的には労働党に近いLib Demsが保守党と連立をくむことを意外に思う人は、少なくないはずだ。

Liberal Democrats の「liberal」は、基本的には、libertarian の liberal といえよう。プライバシー尊重、監視カメラやIDカードへの反対は一貫して Lib Dems の存在価値だし、イラク戦争反対も戦争という行政肥大への反対の側面があっただろう。他方、社会政策ではむしろアメリカ的な liberal で、この点で労働党に近い。Personal initiative を掲げる保守党とは、civil liberty matter では一致するものの、移民、EU、核政策、比例代表制導入などではことごとく対極です。

保守政党と中道左派系の政党が連立する場合、使い捨てされるのはたいてい比較的左派の方だろう。現在の保守党は理念なき expediency がその持ち味であるがゆえに、変節や政策転換はたやすい。他方、一定の principle によって支持層を固めている政党にとって、妥協を重ねることはその支持層から見放されることになる。保守党との連立政権のなかで、Lib Dems がこれまでの、とくに若者を中心とした支持層をどこまでつなぎとめられるのか、はなはだリスクの大きな選択だったのではないだろうか。

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Question time を趣味で聞き始めたころ、キャメロンが頻繁に“this patch box” と口にしているのを耳にした。辞書でpatch box を引いても出ておらず、何だろうと思っていたが、後にそれは、与野党党首に用意される下院のテーブル上の箱“dispatch box”という単語で、転じて与野党党首の職位の象徴語だとわかった。

攻守入替、次の議会から、首相側の dispatch box にはキャメロンが、そしてキャメロンが外遊や育休の際は副首相となった Lib Dems のニックが立つことになる。そして、私が注目していたLib Demsクリス・フーンも、エネルギー・環境相として入閣が決まった。

キャメロン、ニックはともに43歳。労働党のミリバンドは45歳。ブレア―ブラウンの時代は終わり、世代が15年若返った観がある。有能な人材を豊富に蓄えるイギリス政界と、政治文化の豊饒な土壌を痛感させられる。

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ブラウンは、「私が引き受けた二番目に重要な務め(首相職)を去り、一番重要な務め、すなわち夫であり父親という務めに専念することにする」と述べながらダウニング10を去った。この人は本当に打たれ強い人だったと思う。

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選挙戦を通じて、やはりヨーロッパの政治家たちには海千山千のつわものどもがいる、そう実感させられる。

キャメロンはこれで43歳。これに比べて、安倍晋三や前原誠司といった日本の「若手」たちは、一国の首相、野党第一党のリーダーとして、比較を絶するほど実に未熟だった。胆力、精神力、バイタリティ、教養、演説技巧、見えない所での準備や努力、臆することない自己主張と、一瞬にしてそれを制御する強い自己抑制力……日英の政治家では、いずれも雲泥の差です。くわえて元来が語学力のハンデを背負っているわけですから、国際会議などで日本の政治家が太刀打ちできていないのは火を見るより明らかです。

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イラク戦争、今も続くアフガン駐留、植民地問題、自国での貧困、選挙制度改革……イギリス政治が大きな問題を抱えていることは自明で、それに対し国際的な世論の一部として批判的に対峙すべきことも多い。しかし、「政治的」という言葉が党派的偏りをあらわすレッテルとなっている日本の「非政治的」文化からすれば、人々がpolitical であることを自明視するイギリスの政治文化は、多くの示唆を与えているように思う。

「民主政治がどこから始まるかと問われるならば、それはまさに国民が政治的であることからと私は答える。……われわれは政治的である責任がある。政治的といわれる非難に対して、昂然と『しかり政治的である』とたじろがず答える必要がある。 」(福田歓一、「政治と信頼」、『郵政』、1960年7月号、p10)
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by akai1127ohi | 2010-05-13 14:26 | Comments(0)

2010年イギリス総選挙へ向けた観察(5):Liberal Democrats

2006年に滞英した際、Lib Demsを支持するオクスフォード大学生からなる OULD という組織の ML に入り、演説会にも何度か足を運んだ。まだ抜けていないその ML で、投票日が近づくにつれて選挙応援依頼のメイルがたくさん流れている。支持率が労働党を抜き第二位になった時は、彼らの興奮を伝えている。

最新の BBC 世論調査では、保守党が35%、労働党と自民党が28%で並んでおり、これを議席数に反映させると Hung Parliament になるそうです。過半数をとる政党がなければくりかえし解散するというのは、むしろ制度に問題があるだろう。「日本人」はようやく「政権交代」を受け入れた今、イギリス人は、「連立政権」を受け入れる準備があるか試されている。

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保守・労働の二大政党が Personal initiative と third way といった象徴の対峙図式に頼ってきたなか、Lib Dems は CCTV への反対に見られるcivil liberty、グリーン政策、比例代表制を求める政治改革、性的多様性の尊重や移民政策といった争点をうまく取り込んだように思う。

C・ケネディがアル中で党首を辞任した後、2006年に Lib Dems の党首選が行われ、私はこれにも時期的に立ち会うことができた。

現在の党首ニックの演説もその際に聞いた。ニックは長身で一本気、清潔感のある政治家だが、いまいち人間味にかけるのが物足りない点です。ブレアの「攻め」にはチャーミングがあったし、キャメロンの「攻め」にはユーモアがある。しかし、ニックの「攻め」は、どこか刺々しい印象がある。しかし、野党につきものの不確実性 uncertainty というマイナス要素を払拭するには、ニックのような優等生は妥当な選択だったのかもしれない。



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むしろいささか注目しているのは、そのニックと党首選を争ったクリス・フーンである。クリスの演説も Oxford Union の演説会場で聞いた。内容は環境政策、積極的EU参加、比例代表制などだったと記憶しているが、クリスの演説は私が今まで聞いた政治家の演説のなかで最も convincing であり、人を感化させる力があった。Let the best man lead the party という新聞論説に同意した。



党首選では接戦の末ニックに敗れたが、今、Question Time では毎回ニックの横にその顔を確認することができる。選挙後、Lib Dems が、選挙の時だけ自由なイギリス政治をどこまで本質的に変革し、人々の政治への規範的関心をとりもどせるか、批判的期待/期待的批判をしたいと思う。
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by akai1127ohi | 2010-05-04 21:39 | Comments(0)

2010年イギリス総選挙へ向けた観察(4):Ministerial Debate

今回のイギリス総選挙の一番の特徴は、すでにたくさん論じられているように、アメリカ大統領選にならって、都合三回の televised debate が導入されたことです。

イギリスのゴールデン・タイムは日本の朝4時半。1、2回目の Prime Ministerial Debate はさすがにその時間に起きる気力がなかった。しかし、せっかく宿舎管理人にかけあって屋上アンテナの設置を認めさせたのだからと、黎明の4時30分、ベッドの上で布団にくるまりながら、自慢の BBC 放送で、最終回の Prime Ministerial Debate を見た。

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child credit と inheritance tax をめぐる個所では保守党キャメロンとブラウンが対立する局面となり、伝統的な左右の価値観の対峙を示した。他方、immigration では労働、保守両党が厳しく移民制限を打ち出すのに対し、自民党Lib Demsのみが――不法移民を保守・労働両党のここ50年間の政治の不手際と非難しつつ――イギリス社会に定着した不法移民に市民権を与えることを主張し、左右とは異なる対立軸を示していたように思う。

Televised debate の導入によって、今回の総選挙は今までになく党首間の beauty contest の様相を呈している。しかし、保守系新党の無節操な乱立によって、むしろ ugly contest の様相を呈している日本にとって、それは依然として嘲笑より憧憬の対象でしょう。

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そんな beauty contest のなか、当然ながら、ブラウンの前日の Bigot gaffe (言葉のしくじり)は格好の標的になっている。



Bigot Gaffeといい、労働党に有利な要素は一つも見受けられない。最終晩にブレアが懐かしい顔を見せてテコ入れを図っているが、もはや過去の人です。完全小選挙区制の振子作用も手伝って、労働党大敗は既定路線といえよう。

保守党が単独過半数を取れるか、さもなければ Lib Dems と労働党の連立か、というのが焦点だろう。後者の場合も、仮に労働党の議席が Lib Dems に勝っても、ブラウンは引責、ミリバンドかA・ジョンソンあたりが党首に躍り出るのではないでしょうか。注目されるべきは、やはりLib Demsの伸長ぐあいだろう。

Lib Dems の党首ニック・クレッグは、ここにきて急に国際的な注目をあびている。
実は私は、2006年の Lib Dems 党首選の際に、演説会の最前列でまだ一議員だったニックの演説を聞いたことがある。4日の投票日前に、最後に Lib Dems について述べたいと思う。
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by akai1127ohi | 2010-05-01 22:30 | Comments(0)

「キューポラのある街」・浦山桐郎監督、1962年

生活に根づいたセリフの一つ一つに、時代を象徴し、思想を方向づけるものがあり、感動しながら見ることができた。

「意見」、「議論」、「自己中心的」、「無知蒙昧」……。
子どもたちが、「日教組教育」の学校で耳にした言葉で、怒声で片付けようとする封建的な父親へ反論します。

牛乳を盗む少年たちと牛乳を盗まれた青年との相克のシーンから、川口駅前で「北鮮」へ帰る「サンちゃん」たちを見送る川口駅前の壮行会のシーンにかけての10分間は、これから折にふれて見返したくなるシーンになるだろう。

                ***

これまで一歩引いた目線から冷ややかに眺めていた「サユリスト」も、なるほど理解できるようになった。しかし同時に、ジュン(吉永小百合)とともにパチンコ屋でアルバイトをする、常に童顔に憂いをたたえた「金山ヨシエ」も印象的です。

ジュン(吉永)が窓からキューポラを眺めるとき、川口の鋳物工場はミラノの町工場になる。そして、「金山ヨシエ」(鈴木光子)が土手を自転車で駆け抜けるとき、荒川はイムジン河になります。


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by akai1127ohi | 2010-05-01 18:37 | Comments(0)
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