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Modest Comments on contenporary politics by Akai OHI (Twitter:@AkaiOHI)。
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「自分探しの旅」に出よう。もう一回。

所属する大学のキャンパスの随所に、「勉強会、サークル、自分探しの旅…などの名目で近づいてくる宗教団体に気をつけましょう…」という啓発ビラが貼ってある。

手あかのついた、もはや正体を隠した新興宗教団体の勧誘文句にまでなり下がってしまった「自分探しの旅」という言葉。

              ***

映画「百万円と苦虫女」の予告で、蒼井優が「自分探しはしません、自分はここにいるから」といっていた。

「自分はここにいる」。たしかにその通り。

しかし、どこか人を惹きつける「自分探しの旅」とは、実のところ、「他人探しの旅」だったのではないだろうか。他人、他人の暮らし、他人の文化、他人の生活習慣、他人の価値観、他人の住む国、他人の住む国の政治体制……それらに、貧乏、裸一貫、丸腰で飛び込んでいく。とにかく、外国には何かすごいものがあるはずだとう好奇心と、それを見たい、経験したいという渇望。そういった旅に内在的な可能性、他人によってぶっ壊されるかもしれない自分と、それを踏まえて一まわり違うようになった、新しい自分への糸口。

渡航の禁を犯してまで外国に行こうとした吉田松陰の「踏海の志」にも通じるような、現代におけるそういったロマンを込めて、われわれの世代は「自分探しの旅」といってきたのではないだろうか。
だから蒼井優に、それでももう一回、自分探しの旅に出てみない?と、呼びかけてみたくなった。

               ***

『モーターサイクル・ダイアリーズ』』(Diarios de motocicleta、2004年)を見た。
青年エルネスト、後のチェ・ゲバラと兄貴分のアルベルトとの、南米モータサイクルの旅。

まず看板に偽りあり。モーターサイクルは旅を始めて三分の一程度で故障、あとは基本的に徒歩とヒッチハイクの旅だった。しかし、素晴らしい南米の景色が見れて、息抜きには適した映画だった。

孤島に隔離されたハンセン病の療養所は修道女によって運営されているが、昼食はミサに参加した者のみに提供される。昼食をもらえずに詰め寄る青年エルネストに、「まず心を富ませて、体を富ませるのは次だ」と修道院長。逆ではないのかと尋ねたくもなる。が、かように「心の富んだ」宗教家たちが、ハンセン病の療養所を運営してきたという事実の意味も考えた。

「博士」の家の門前に配達されたミルクを、アルベルトがくすねてエルネストに渡すシーン。先日の映画「チェ・ゲバラ28歳」では、旧政府のブルジョアの車を接収した革命軍を叱責してハバナにまで戻させるという厳格な革命的倫理感を見せたゲバラだから、盗んだミルクに口をつけずに説教か、と思いきや、そのままごくごく飲んでいた。革命家としての倫理観も経験的に鍛え上げていったものだろうか。

二人がヒッチハイクした車で、チリのバルパライソValparaísoという街を通るシーンがあり、車中で運転手がパブロ・ネルーダの詩を口ずさんでいた。孤を描く海と、丘陵に形成された街並がとても素晴らしく、いつか行ってみたいと思った。ローマよりもナポリを、ロンドンよりもダブリンを、ソウルよりも釜山を、マドリッドよりもリスボンを、そして東京よりも広島を、私が好きなのは海があるからだ。

               ***

エルネストの旅の同行者アルベルトは、30歳になるまでに南米旅行をしなければならないという義務観があったようだ。やばい、自分もあとa couple of yearsで30……。来年の春休みには、「自分探しの旅」に出よう。もう一回。
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by akai1127ohi | 2009-06-24 01:52 | 散文 | Comments(0)

雑感

盧武鉉のことなどもあり、勉強のかたてまに、伊藤千尋、『たたかう新聞―「ハンギョレ」の12年』(岩波ブックレット No526)など再度散読。ハンギョレは、韓国の民主化運動で職を失った新聞記者たちによって創刊された、韓国の主要紙の一つ。いわゆる386世代を主たる購読者層にしてきた。

朝日新聞の記者、伊藤千尋がハンギョレの社長を訪れて、「帰れ!」と怒鳴られるところは、胸に来るものがある。

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ハンギョレの宋社長によれば、情報統制がひかれた軍政時代、韓国国内の民主化運動の情報は、朝日新聞によって知ったという。

「闇を照らす唯一の光、それが朝日新聞だった。数日遅れで日本から送られてくる朝日新聞を、私たちはなめるように読んだ。朝日新聞を読んで初めて、韓国で何が起きているかを知ることができた。それがあったからこそ、苦しい軍政の下でも未来への確信を持ちながら民主化の運動を続けることができた。今日、軍政を終わらせ民主化の時代に変えることができたのは朝日新聞があったおかげだ。」(『たたかう新聞―「ハンギョレ」の12年』、岩波ブックレット、p67)

「そのころの韓国の記事を書いた特派員を朝日新聞は冷遇した。彼のあとに赴任した特派員は、民衆を取材せず政権側の言うことばかり書いた。なんだ、今の朝日は!そんな朝日に話すことはない。帰れ!」

ハンギョレの社長にそのようにどなられ、伊藤千尋は、韓国の民衆を支えた新聞が日本にあったことに、うれしさで「体が震える思い」だったという。

               ***

今年は天安門事件20周年ということで、新聞でも学生活動家の「その後」を紹介しているが、気になるのは、事件後、王丹、柴玲、ウアルカイシも皆アメリカに留学していること。「西側」の一員として、日本政府も中国共産党の強権弾圧を批判してきた。北京から地理的に一番近い「西側」だったにもかかわらず、なぜ天安門の民主化指導者は、日本に亡命したり留学したりしないのだろうか、と感じた。

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なぜ日本が、大陸アジア諸国において独裁政治へ抗議する民主活動家の「アジール」になれないのか。それこそ、歴史的にイギリスが大陸ヨーロッパの反体制運動家や被抑圧者を受け入れて、それを自らの活力にして、ロンドンを国際的都市にしてきたような力を、なぜ東京が勝ちえていないのか。そのことの意味を、日本人は考えるべきだろうと思う。

その責任の一端は、中国共産党批判をしてきた日本の保守論壇が、中国の民主主義や中国での人権のためにそのような批判をしているのではなく、ただ単に嫌中感情からそうしているにすぎないという点にあると私は思う。「人権」や「民主主義」、チベットの「民族自決」なる価値を掲げ、高みから中国共産党を批判しているように見えて、実際のところ、自分たちもそのような、一定の普遍性を持つ価値を血肉化しえていない。建前としてさえ把持しつづける一貫性も欠如している。

中国共産党批判をしてきた日本の保守右翼が、命を賭して中共と闘った天安門の学生運動家たちを、なぜ身銭を切ってでも受け入れて支援しないのか、私にとっては疑問のまま残っている。
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by akai1127ohi | 2009-06-19 00:39 | 散文 | Comments(0)

This Is England(英・2006年)

最近ちょっと重いと指摘されるこのブログを、さらに重くする映画を見てしまいました……。
12歳の少年シェーンが、イングランド愛と移民排斥暴徒を起こすpoor whiteの運動に関わり、最終的にイングランド国旗を海に投げるまでの軌跡。大変重い内容ですが、いい映画だと思いました。

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私にとって最も印象深かったのは、シェーンがなじみの雑貨屋のパキスタン人の店主を、侮蔑語をつかって罵倒するシーンである。イングランド右翼たちは物品を奪って意気揚揚として出て行くが、その後のパキスタン人店主はどうなったのだろうか。あの人は、どのようにして、崩れかけたかもしれない自分の自尊を再構築するのか……というようなことを感じました。

おそらく、差別された自らの国籍をいやになるほど直視して、そこに過剰な誇りを見出す選択肢と、国籍や人種を超越して超然的態度に「悟り」を開く選択肢の両極端があり、その間に、それらの組み合わせとしての実に無数の選択肢がある。時間とともに変化もするだろうから、ここに時間の契機を入れると、およそ他人が忖度できる限界を超えている、複雑で多様な心象風景が去来することになるだろう。

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見終わった後に渋谷のEnglish Pubで議論するなかで、なぜpoor whiteが、社会的落伍の鬱憤のはけ口をもっぱら「国籍」や「人種」に向けるのか、というのも改めて疑問に感じた。スケープゴートになりうる特徴というのは、ほかにもあるのに、なぜ「国籍」と「人種」なのか……。ちなみに、Iさんは議論いろいろありがとう。

欲を言えば、サッチャー政権下のフォークランドが物語の背景として折にふれて意識化させられる仕組みになっているのだけど、そこで高唱されるのは当然Britainで、シェーンをとりまくEnglandの問題群とどのように重なっているのかいないのか、よくわからないままだった。しかし、一見を進める映画です。
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by akai1127ohi | 2009-06-04 00:15 | 散文 | Comments(2)
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