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Modest Comments on contenporary politics by Akai OHI (Twitter:@AkaiOHI)。
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修善寺まで(1)

学部1年生のための英語クラスTAの仕事は、大したことはない。
問題プリントを配ったり、教員の指示に合わせてDVDを再生したりする。

自分の担当する英語クラスの先生は、壮年の紳士I先生だ。
自分は文学には門外漢だが、翻訳文学に造詣が深く、有名な学会の会長もしている。
ある日、リスニング教材に駒場博物館に所蔵されているマルセル・デュシャンのガラス絵画、「Bride Stripped Bare by her Bachelors, Even」が出てきた。「これは僕には訳せません」。翻訳の大家は、むしろ翻訳をしないことで自己の気品を高めた。

               ***

そのI先生が、最近の大学新聞に古本屋めぐりについての短文を寄せているのを見た。
かつて「O線K駅」の駅前界隈にあったという古本屋の、博学岩窟店主などのアネクドートが回顧されていた。


次の週の授業の際、先生、あれは小田急線の経堂あたりでしょうか、と尋ねてみると図星。I先生によると、小田線は地味な古本屋だけでなく、旧国鉄の迂回路線という意味合いがあったそうだ。東京を通らず伊豆半島へ抜けられるため、人目を避けたいいわくつきの男女にとって好都合な路線でもあった。

「昭和二年に東京行進曲という歌があってね、そこで「シネマ見ましょか、お茶しましょうか、それとも小田急で逃げましょか、ってね。」
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by akai1127ohi | 2008-12-30 01:01 | Comments(0)

「自画自賛史観」について

日本も意外と悪くない、言われるほど日本は低くない、日本は○○の分野では先導的、日本人はもう少し自信を持つべき、実は「ものすごい日本」……。

最近、このようなそこはかとない日本評価論の流行が気になる。
どこの国に行っても、その国に比べて日本が遅れていること、日本がその国から参考にすべきことばかりが目につく自分としては、このような議論には強い違和感を感じる。教育、政治、社会保障や社会福祉、都市景観、住宅環境、生活水準、家族や地域共同体の強固さや健全さ、社会の活気……、さまざまな領域で日本が欧米から学ぶべきことは依然としてあまりに多いと感じるからだ。

               ***

エディンバラの観光名所の一つにPeople’s Historyという蝋人形館があって、エンゲルスが『イギリス労働者階級の状態』で書いたような産業革命期スコットランドの人々の暮らしが再現されているのだが、当時のスラムを再現した小屋を見たとき、私の印象に一番はじめに想起されたのは、現在の日本の大学学生寮だった。日本とイタリアのどちらが先にG8から外されるか、というのは、その時からずっと抱いている「危惧」でもある。

正直に告白すると、日本の「遅れ」についての自分の自覚は、そのような欠点を外国人に気付かれる前に、日本人自身によって早く、しかも内々に改善されておかねばならない、という意識を伴っていた。(外国人に日本の本当の実力を気づかれる前に!)。イギリス社会との比較のなかで、青年風のナショナリズムの感覚が異常なほど鋭敏に磨かれていた頃の自分にとって、とにかく、底上げ評価されている感のある日本の評判を、なんとか維持したいと思っていたわけだ。

               ***

保守派が一様に評価する明治期日本において、政治制度や産業において日本の近代化を担った人たちのなかで、最近のような「日本は素晴らしい国だ」という意識を持っていた人がいただろうか。私はこのような自己満足の意識を、日本近代化の担い手に見たことがない。それぞれ、日本が西洋に遅れているという痛切な恥や屈辱の意識を焼き鏝のように押し付けられ、その劣等感に身を引き裂かれるような悔しい思いをしながら、それらを日本近代化のためのあの恐るべき使命感として昇華させたのではないだろうか。

国家の基盤を本当に強くし国民生活を向上させようとうする意思は、「自画自賛史観」からは決して生まれず、ある種の建設的な「自虐」的認識の賜物だと思う。

諸外国に模範とされた日本の美点など、日本人が気にすることではない。
それより、日本が諸外国から学ばなければならない日本の欠点こそ、日本人が気にすべきことではなかろうか。

               ***

日本も意外と悪くない、言われるほど日本は低くない、日本は○○の分野では先導的、日本人はもう少し自信を持つべき、実は「ものすごい日本」……。

こういう議論は、夜な夜な昔の模擬試験の好成績を引っ張り出してにやにや眺めては、全然目の前の勉強に手のつけない受験生に似ている。端的にそれは、最も地味で困難な課題に着実に取り組むことから目をそむけさせる、甘えの一種だ。そのような学生は、本番を見据える堅実な学生に敗れる。根拠のない「お国自慢」は、日本社会が本当に必要としている改革への「産みの苦しみ」を回避するための、甘えの一種であり、あえていえば、いわば亡国の議論だろう。
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by akai1127ohi | 2008-12-14 16:02 | Comments(2)

加藤周一のこと

新聞の訃報に接して、何ともなしに、初冬の一日、当座の勉強を一区切りして、加藤周一の岩波ブックレット、『学ぶこと 思うこと』を再読した。

この本はもともと、駒場で新入学生のために講演をしてほしいという当時の私たちの依頼に対し、加藤さんが応えてくれて実現したものだ。講演のタイトルは論語の「学びて思わざれば暗し、思いて学ばざれば危し」から来ている。講演の後に、岩波書店に企画を持ち込んでブックレット化された。

この講演を聞いた学部二年のときの自分は、「学ぶこと」と「思うこと」の相互依存、相加相乗的な関係を、ウェーバー的な学問と判断の峻別を克服する契機として受け止めた。

今回、再読して感じたことは、「今頃の若者は…」というメンタリティーとは完全に無縁な加藤氏のmental attitudeだ。学生を鼓舞し、若者に希望をかけ、改革や革命は「あなた方がやること」という未来観がある。

               ***

「ほんとうに怖い問題が出てきたときこそ、全会一致ではないことが必要なのだと私は考えます。それは人権を内面化することでもあるのです。個人の独立であり、個人の自由です。日本社会は、ヨーロッパなどと比べると、こうした部分が弱いのだと思います。平等主義はある程度普及しましたが、これからは、個人の独立、少数意見の尊重、「コンセンサスだけが能じゃない」という考え方を徹底する必要があります。さきほど述べたように、日本の民主主義は平等主義的民主主義だけれど、少数意見尊重の個人主義的な自由主義ではない。それがいま、いちばん大きな問題です。」(加藤周一、『学ぶこと・思うこと』、p52)

               ***

またそんな話か。
また「リベラル」か。そんな話はもういい。
もういい加減に啓蒙に憧れるのは終えろ、手あかのついた……。
「ブルジョア的」自由だろ?現実を直視しろ。

……実に様々な反応が思い起こされる。
自分としても「またそんな話」のようにも聞こえる。
しかし率直に、「またそんな話」を日本人が本当に克服できているのか、ずっと疑問でもあるのだ。精神の奥底を巣食っている封建的な精神の片鱗が、新しい思想や運動の意匠を着飾ってであれ、ひょっこりと顔をのぞかせていることは本当にないのだろうか。

格差、不平等、貧困……それらの問題に「リベラル」が直面することが重要だ。現実に直面することが重要だと思う。しかし、格差の問題は、人間が自律的な生を送ることができるための条件であるべきだという思いもする。とにかく、現実に直面しつつ、なおかつ「リベラル」であることの意味を問うていきたいと思う。
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by akai1127ohi | 2008-12-07 04:23 | 日本政治思想史 | Comments(2)
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