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Modest Comments on contenporary politics by Akai OHI (Twitter:@AkaiOHI)。
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「ETV特集・禁じられた小説」(NHK・27日夜9時放送)

自分より常識的で上品でもある人が、意見を求められたとき、雰囲気をかまわず自分よりも遥かに原理的な理想論を公言するのを聞いて、はっとしたりすることがある。

自分は、「政治的思慮」やら「リアリズム」の名の下に、安易に現実と妥協しがちなところがある。だからこそ、意識的に、建前としての理想論を公言することが必要ではないかと思う。すぐに現実と妥協しがちな本音を、それに引きずらせることが重要なのではないかと思う。                
                  ***

ラスキのCollected Worksを編集したP・ハーストは、ラスキの二つの特徴として、その恐れを知らないラディカリズムと、「既成の世論を不快にさせる能力his ability to annoy established opinion」を挙げている。これは言い得て妙だと思う。

ラスキの著作に感じるのは、理想的な原理や約束事に「文字どおり」に行動することが、本音によって動く社会や集団に対してある種の違和感や、時には一時的な混乱さえ招く場合でも、これが本来あるべき原理だと合意したではなかったか?と明確に問い返せる能力だ。英国リベラリズムの優等生なのに、必要とあらば、反社会的というレッテルを貼られようとも原理的に発言する。それが、人を動かす魅力になっている。
 
                   ***
  
NHK、「ETV特集・禁じられた小説」(27日夜9時放送)を見る。
高校時代の悪友シーウルに薦められたもの。

戦前の総合雑誌「改造」における、論壇における社会批判と、それに対する内務省の検閲制度に焦点をあてた特集。改造社に加えられた検閲の内実と、改造社が戦争末期に廃社に追い込まれるまでが描かれている。番組の最後には、今年1月に亡くなった高杉一郎へのインタヴューがあった。

内務省の検閲によって、編集者、出版社の自主規制にいたるメカニズムが明瞭に示されている。出版社も、商業の論理に乗っている以上、採算を基準に営業しなくてはならない。出版物が差し止めになるよりは、検閲を意識して作成し、市場に出たほうがいい。したがって、番組で澤地久枝がいうように、いったん自主規制がはじまると、権力が「一歩下がれ」とちらつかせるだけで、出版社は自ら三歩下がってしまう。

日本国憲法では検閲は事前事後を問わず完全に禁止されているが、まさに憲法学でいう検閲のchilling effect(萎縮効果)を理解した。しかし検閲は、出版社や編集者に対して
chilling effectをもたらすだけでなく、同時に、小説家や言論人の思考そのものにもある種のshrinking effectをもたらす。すなわち、活字を用いる表現者が、創作を多くの人の公開にさらすために表現しているとすれば、検閲は活字を媒介にする表現行動の創造性それ自体を、萎縮させてしまう。出版のみならず、人間の内面の創作の裾野さえ規定しまう恐れがあるのだと感じる。

自分を省みても、検閲こそ無いものの、他人の目や場の雰囲気を読みとって、過度に理想的な意見は慎むべきだと考えているふしはないかと思わされる。だから、無理をしてでもあえて三歩進んだ理想主義を唱えることの効用があるように思う。
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by akai1127ohi | 2008-01-28 21:31 | Comments(0)

「持続的な瞬間ーオクスフォード経験記」 (その28)

「持続的な瞬間」 その28 (手のひらサイズのソクラテス)

世界史の教科書に出てくるギリシアは、二つしかない。
第一にまず、アテネやスパルタなどのポリスに代表される、紀元前5世紀ごろの古代ギリシア。その次は、およそ2000年飛んで、1829年のギリシア独立戦争だ。普通の教科書で目にするギリシアは、ほぼこの二つに限られる。換言すれば、紀元前4世紀にマケドニアに支配されて以来、19世紀に独立を回復するまでのギリシアは、2000年以上にわたって「世界史」の表舞台から去っていたのだ。

この間、ギリシアは、マケドニア、ローマ、ビザンチン帝国(東ローマ)、オスマン・トルコの支配下に組み入れられ、独自の政治単位を持つことはなかった。1930年の独立後も政治は混迷を続け、長らく軍事政権の下にあった後、1974年に共和国となる。その後も国民生活は貧困で、1981年にECに加盟した時は、アイルランドとともに「ECのお荷物」とされた。

アテネについて翌日、さっそく古代ギリシアの遺跡、アクロポリスを歩いた。
パルテノン神殿は、石造りだが、その石の風合いが、妙に柔らかく感じられた。だが、パルテノン神殿にいたる、白い石作りの長い階段を昇りながら想起されたのは、再びヘーゲルの言葉だ。

「偉大な芸術家たちが作品を完成すると、世人は、このとおりに違いないと言うことができる。すなわち、その芸術家一個の特殊性は全く消え去っており、どんなわざとらしい手法もそこには見えないということである。フィディアスにはどんなわざとらしい手法もないのであって、彼の作品では形態そのものが生きて現われ出る。ところが、芸術家がへたであればあるほど、それだけますます作品に彼自身、つまり彼一個の特殊性と恣意が見られるのである。」(ヘーゲル、『法の哲学1』(中公クラシックス)、p101)

フェイディアスによるパルテノン神殿には、どんなわざとらしさや恣意性がない。
それは、ただ単に神殿であって、それ以外の余計な虚飾や特殊性は捨象されているという。ヘーゲルのフェイディアス評は、文章についても言えることだ。自分が書くものには、まだまだ自分自身の「特殊性と恣意」が現われている・・・・・・。

プラトンの作った学校アカデメイアにも行った。
アカデメイアは、プラトンがBC387年にアテネに作った学校である。
弟子のアリストテレスは17歳の時にアカデメイアに入門し、その後20年間にわたって在籍した。アカデメイアはAD529年に東ローマ帝国によって閉鎖されるまで、およそ900年にわたって存続した。現在の建物は、トルコからの独立戦争にいたる19世紀末におけるギリシアの民族意識の高まりとともに1887年に再建されたもので、現在はCeremonial Hallがあり、アテネ大学の史跡の一つとして機能している。

アカデメイアの正面、ソクラテスとプラトンの像の前に立ったとき、私はいわば、地理的な意味で「辿りついた」というような印象を得た。西欧の知的伝統の源流は、オクスフォードでもケンブリッジでもなく、ましてやハーバードでもなく、ここアカデメイアなのだ。

パルテノン神殿とアカデメイアが古代ギリシアの遺跡だとすれば、国立歴史博物館と戦争博物館は、1930年の独立以来の、近代国民国家としてのギリシアを表象する施設であろう。

国立歴史博物館は市の中心部にあり、独立当初に一番初めの議会が置かれた建物のなかにある。展示の白眉はやはり19世紀の独立戦争の部分であろう。独立戦争の過程が絵画資料とともに再現され、制服や武器など当時の物品が展示されている。

戦争博物館はシンタグマ広場から15分程度歩いたところにあった。
ここでもまた、ギリシア独立戦争時の、ベニヤ板のような素材で出来た飛行機や、お団子のように柔和な大砲などが、ファンファーレの音でも聞こえてきそうな様子で並べられている。
靖国の遊就観に通じる、国民国家のための教育施設といえよう。ギリシアもイタリアも、古代文明で一時代を築きながら、国民国家としては出遅れた国々だ。そこにある種の悲哀も感じられる。

                  ***

アテネに来て3日目くらいだったろうか、昼下がり、三人で市の中心部から電車で20分ほどかけて、海へ向かった。素晴らしい夏の日ざしだ。海水浴場で海に入った。

だが、エーゲ海で海水浴をする日本人の男は、やはりどこか滑稽さが付きまとう。何というか、決まりが悪い。Shizukaも海に入ったが、上にTシャツを着ている。まあそれはそれで似合ってるからいい。自分が海パン代わりにはいているのは、高校の時の体育の半パンだ・・・・・・。

夜、三人でに食事に出かけた。
油っぽい肉料理を食べた後、アクロポリスの近くの商店街を歩いた。

夏の夜のアテネは、とても活気にあふれている。
だがとにかく、Shizukaの買い物は長い。一人でみやげ物屋の隊列をはなれ、日中よく目にしたココナッツの皮を買って、街路に座って食べてみた。食べ終わってみやげ物屋の通りにもどると、まだShizukaは熱心になにやら比較検討している。

しかたないので、自分も、いつか買おうと思っていた例のものを、この場で買った。
手のひらサイズの、ソクラテスの胸像だ。土産物屋には、ソクラテス、プラトン、アリストテレスの胸像が、大きさに応じて5ユーロ程度から売ってある。以前、本郷で法哲学のI先生の研究室にお邪魔した機会に、研究机の横に、巨大なプラトン(アリストテレスだったかな?)の胸像が置かれているのを目にした。机に座ると、ちょうどそのプラトンに睨みつけられるような配置だったと思う。自分もその辺のみやげ物屋で、手のひらサイズのソクラテス像を5ユーロで買った。帰国してから、勉強机の片隅に置こうかと思う。
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by akai1127ohi | 2008-01-07 14:40 | 「持続的な瞬間」 | Comments(0)

「持続的な瞬間ーオクスフォード経験記」 (その27)

「持続的な瞬間」 その27 (アテネへの船中)

ローマで4日間ほど過ごした後、ShizukaとNingningそして私の3人は、ローマからイタリアの南部、長靴のかかとにあたるBariまで来て、そこから船に乗り、ギリシア西部の港パトラに向った。

イタリアの南端からフェリーでギリシアに入るのは、体力があってお金のない若い旅行者には結構人気のルートだ。僕らの乗ったフェリーは、大きな客船で、夕方に出航し、船の中で一泊、翌朝の正午ごろギリシアにつく旅程だ。船の後尾にはイタリア国旗、先頭にはギリシア国旗がなびいている。

僕らが予約したのは一番安い席で、夜は船のデッキにざこ寝というものだ。
広いデッキの真ん中には小さなプールがあり、その周辺に多くのテーブルとイスがある。出航後しばらく、三人でデッキで話していると、ゆっくりと空の色が変わっていくのが分かる。蒼とオレンジ色がまざったすばらしいエーゲ海の夕焼けを見た。

デッキの中央には、食事や酒を提供するバーがあり、それが夜遅くまで開いている。
そこに二人の荒くれ男がいた。一人は迷彩服のズボンをはいたやくざのような中年男で、もう一人は白髪をたたえた巨漢の男だ。バーの前にたむろし、大きな声を出して飲んだくれている。聞くと、荒くれ者たちはドイツの退役軍人だという。

そのうちの白髪巨漢の男は、その時すでにかなり酔っていただろう、Ningningが一瞬だけ席を立った瞬間にそのイスを奪い取った。あきらかに乱暴な行為だ。Ningningが抗議したが白髪巨漢は取り合わない。そのまま事は収束しかけていたが、私は、変な意地から、とにかくは白髪巨漢のライターを取り上げて自分のタバコに火をつけるという、何ともささやかな「復讐」だけは敢行した。二人はその後も飲みつづけ、夜半には迷彩服の中年男が、バーでバーテンと言い争いになった。とにかく、船のお騒がせ者なのだ。

エーゲ海を染めた夕陽もすっかり落ち、船上は夜半となった。
Shizukaはちゃっかり、船内の自由席に開いている席を見つけて、そこで寝た。
デッキの様子も一段楽して、海風の静けさが吹きぬけるようになった。私は、デッキで絵葉書などを書いていると、やをら、さきほどの荒くれ者の一人、白髪で巨漢の男が私のテーブルの対面に腰をおろしてきた。

男は泥酔していて、もはや明瞭に話すこともできなかったが、私に何ごとかを話し掛けてきた。そして、飲みきれない酒を私に差し出して、飲むようにとすすめた。ロック・グラスに、何やら透明な、水のような酒が入っていた。一口飲んでみると、この屈強な老人には似合わない、なんとも爽やかで清涼感にあふれる、かすかにハッカのような甘さのする酒だった。
(これはギリシアに上陸してから、ギリシアの名酒ウゾOuzoであることがわかった。ぶどうの皮から作る食前酒で、これは夏のギリシアの旅を象徴する香気となった。)

白髪巨漢の男はおもむろにタバコを取りだすも、ライターを見つけかねている。
私が男のタバコに火をやると、しばらくして、男は私の前で眠りこんだ。Ningningのイスの件の行きがかり上、決闘も辞さずの心意気かと踏んでいた自分にとっては、いささか拍子抜けだった。

私は男が眠りこんだあとも、しばらく正面から見ていた。
さっきまでバーの前で大きな声で荒くれていた男は、今は静かに、どこかか寂寥をたたえながら、眠っている。寡黙さとは無縁とさえ思われた荒くれの男が―――。人影少なくなったデッキでその男を見ていると、何だろうか、どこかで経験したような光景に通じる気がしてきて、気持ちが丸みを帯びていった。眠りに落ちた男に対座していると、どこか、それは自分の父親を思い出させるのだった。
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by akai1127ohi | 2008-01-07 14:31 | 「持続的な瞬間」 | Comments(0)

謹賀新年

2007年の三大収穫
ジョン・ロック、加藤節訳、『統治二論』、岩波書店。今ここで、ロックを読み返す意義。
佐藤慎一、『近代中国の知識人と文明』、東大出版会。中国近代化のもう一つの顔。
鈴木道彦、『越境の時ー1960年代と在日』、集英社新書。日本の政治理論の生きた教材。

               ***

明けましておめでとうございます。昨年は大変お世話になりました。今年も宜しくお願いします。
人生万事塞翁が馬。順境も逆境も次に備えて。志豊かに新年を迎えました。
                    2008年 元旦 Akai OHI
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by akai1127ohi | 2008-01-01 00:08 | Comments(2)
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