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Modest Comments on contenporary politics by Akai OHI (Twitter:@AkaiOHI)。
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「わかりやすい政治/変える政治」を求める圧力の先にあるもの

NHKスペシャル「18歳からの質問状」(5月4日夜10時)を見た。

民進党山尾、共産党吉良、公明党ながら比較的リベラルと聞く佐々木さやかなどが出演し期待感があったが、議論の進み具合に、およそ30分で違和感を感じはじめる。この違和を言葉化する必要を感じ、荒い記録までに書き留めます。

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この番組の構成は、自民党から共産党まで多様な政党をまとめて「政治家チーム」として一括りにし、18・19歳の新有権者と対峙させる構図で、政治家には、「政治家どうし」の議論にならないように、個別具体的な政策には触れてはいけないという決まりがある。その上で「政治家vs新有権者」という擬似的対立軸の上で議論をしたらどうなるか。

案の定、18・19歳による政治家への批判は、政治に関する理念や価値観とは直接の関係のない、いわば没イデオロギー的な論点に収斂していく。たとえば、①政治家は「わかりやすく」話すべき、②政治家の歳費は高すぎる/政治家はそれに見合った働きをしていない、など。

これらはいずれも、より本質的な政治的論点、すなわちTPPや消費税や安保法制といった現下の政治課題や、その背後の「あるべき社会」をめぐる価値観をすべて括弧に入れた話であり、この番組は、そのような価値観対立やイデオロギー対立を「避けた」政治の語りがどのような帰結へ行きつくかを、萌芽的に示していたように思える。

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たとえば「政治家は難しい言葉で話しすぎ/もっとわかりやすく若者に響くように話せ」という批判も、その「難しさ」の定義は曖昧で、共産党の理詰めの質問が難しいというレベルとも、安倍の答弁が「はぐらかし」で難しいと言うレベルとも判然しないとまま、とにかく「政治家はわかりやすく話せ!」という批判がスタジオ共通了解となっていく。

「政治家の歳費が高すぎる/なんでそんなにお金もらってるのか」という批判も、これ自体は一定の妥当性はあり、適正な歳費へと縮減されるべきは当然だが、とはいえ、現下の所得の不均衡の全体像から見て、本来、公平の観点から最も批判されるべきは、企業のCEOや銀行頭取らや株主らや金融資本であり、それらの富がけた外れであろう。むしろ、政治家の「高給」叩きは、それを相対的に不可視化させる「ショー」のようにも感じた。

全体的に、政治家を「一まとまり」にして、それに18歳有権者を対峙させて批判させる同番組には、いわばここ10年の「公務員叩き」の延長上にある、ある種の「つるしあげ」的な瞬間を感じないでもなかった。

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「政治家は高い歳費を貰ってるんだから働いて成果を出せ」と言う批判も、そもそも何が政治家の「成果」なのかを論じることが本質的であり、それをめぐって本来は価値観が多様に乱立しているはずであろう。しかし、「結果」とは何かという内実を議論することは括弧にいれたまま、とにかく「目に見える結果を出せ」となる。

新有権者の一人がいみじくも、「こちらはお金を払ってるんだから政治家はそれに見合った働きをするべき」と言っていたが、確実な「消費者意識」だけはあるのである。

だって金(税金)を払ってるんだから。
自分たちは税金払ってるんだから、そして政治家はそれで歳費をまかなってるんだから、ちゃんとやれ、となる。

基本的に、料理を作る作業にまったく関与しない/できないまま、料理の代金は払ってるので、早く迅速に美味い料理をしっかり運んでこい、という式の「批判」になる。

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元来、「政治のプロ」と有権者を隔絶させ、政治家と若者に線を引いて対立構図を作ってみること自体が、擬似的でまやかしの対立図式であると思える。政治に対する当事者性を実感しえず、その帰趨を左右する権利もないのだから、必然的に批判は「無責任」でしかありえない。有権者が「政治のプロ」を無責任に批判し、「政治のプロ」がその特権の裏返しとしておもねって聞く、といういびつな構図を作り出すことが、主権者教育であるはずがないだろう。
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本来は、憲法、TPP、消費税、安保法制といった「本当の、本質的な政治課題」をめぐり、国会議員も18歳も関係なく、賛成反対留保を明らかにしたうえで討論することこそ、政治的な番組というものだろう。

価値や利害の多様に対立する課題をあつかい、それに対する態度決定をめぐり真剣に議論すれば、「わかりにくい」主張は議論のなかで自然に淘汰されるし、どうすれば「わかりやすく」主張を展開できるかが自然に体得される、はずであろう。

(その意味ではこのようなNHKの「安全な」啓蒙番組より、もっと生々しくて野卑で正直な「朝まで生テレビ」などの方が、政治討論の質としていかに二流三流であれ、より本質的な主権者教育の実践とも感じる)。

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番組に登場した18・19歳の政治批判のあり方は、おそらく90年代以降の日本のメディアによる「政治批判」の論調のなかで政治報道に触れ、それによって政治観ないし政治家観を作ってきた世代の、或る意味で必然的にパターン化されたものと感じた。

1990年代以降、冷戦構造の終焉とともに、左右対立の時代遅れ、イデオロギーの喪失が「常識化」され、政治における価値感の対立が喪失された。左右対立に基づいた政治対立軸、その「ナラティブ」に従った政策論争を「終わった」ものとして不可視化する言論構造が、ここ20年以上続いている。

その結果としてか、90年代以降の日本政治をめぐる対立軸らしきものの一つは、政治をめぐる価値観とはあまり無関係な、非イデオロギー的な課題をめぐっての、「改革か否か」の競合、あるいは「誰がもっとも効果的に改革できるか」というものである。

対象は何かを明示しないままの「はっきりイエス、はっきりノー」の賞賛、目的語不在のままの「改革」、言ってる中身不在のままの「わかりやすい話し方」の称揚なども、それに伴う象徴的な政治スローガンといえよう。

そして、行政区画の改変(大阪都構想など)、公務員制度の改革、国会議員の削減といった課題で実行力と効率性を競い合う政治は、このような、非イデオロギー的な課題をめぐっての「改革か否か」をめぐる政治に最も適合的な政治競合であり、それゆえ、ここ10年以上の日本政治の「対立軸」を表層的に規定してきたように思える。

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「政治家は庶民にわかりやすく政治をしろ」という圧力、そして「変える政治/改革する政治」を賞賛する圧力とが帰結させるものとは、一体どんな政治だろうか。

それはすなわち、過度にわかりやすく単純化された擬似「対立」構図を作り出し、比較的容易に変えることのできる対象を狙い撃ちして「改革の成果」を作り出す政治に帰結するのではないか。

「わかりやすさ」とは、たとえば小泉郵政劇場であったり橋下の友敵政治であったりするだろう。「変える政治」とは、55年体制下で一定程度の社会的機能を果たしながら、現在はいわば脆弱化するとともに「既得権化」した中間団体(たとえば労組など)を攻撃、改編して「達成」とする政治だったりするだろう。

すなわち、「わかりやすさ」と「変えること」を目的化して政治に要求する言論圧力は、わかりやすい擬似対立図式を煽るポピュリズムと、非本質的で「変えやすい対象」を狙い撃ちしてその解体を「成果」として目に見える形で出すいびつな改革主義を招くのではなかろうか/招いてきたのではないだろうか。

「わかりやすく」かつ「結果を出す」ことを基準にすれば、それはポピュリズム的な改革政党を要求する圧力になっていくだろう。端的にいって、あの番組に出た18歳のおそらく半分くらいは、おおさか維新に入れると私は思う。

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番組では、奨学金を背負う大学生も紹介されており、母子家庭出身の国立大学生が、月15万、4年間750万の奨学金(奨学ローン)を借りることになり、今から倹約してごはんに納豆とマヨネーズをかけて食べる状況も紹介されていた。

これは実質的に本質的な政治課題であろう。
そして、これを番組も政治家も無視してはいない。

しかし、こういう本質的な政治課題が、「改革の政治学」の語彙だと、どうもうまく翻訳されないのである。「改革の政治学」の言葉には、これを掬い取り、アジェンダ化する言葉がない。だからどうしてもどこかずれがある。

求めるべきマクロな社会像をめぐる「価値対立の政治学」、政治の目的をどこに定めるかという「理念の政治学」に、これらの課題を置きなおす作業が必要と思える。

https://youtu.be/86HNCFVi-yg


https://www.youtube.com/watch?v=86HNCFVi-yg
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by akai1127ohi | 2016-05-08 00:56 | 政治時評 | Comments(0)
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