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海老坂武『加藤周一』(岩波新書2013)を読んでの雑感

海老坂武『加藤周一:20世紀を問う』(岩波新書2013)拝読。

全体の印象は、日記や時代考証を基にしながら時に『羊の歌』の「誇張、矛盾」に言及するなど、一定の「加藤神話」の相対化を孕みつつ、「嘘つき光っちゃん」ならぬ「嘘つき周ちゃん?」の横顔を友人の立場から追う、というもの。

加藤周一氏に対して、私は微妙な態度でいて、尊敬しつつも、ある種の「加藤周一信仰」には適切な距離が必要とも感じてきた。加藤に比して、不当な過小評価をされている現代日本知識人がいるから。たとえば「近代」との格闘では荒正人が、「マルクス主義」との格闘では日高六郎が、文章の洒脱さでは林達夫が、それらの点では加藤よりも優れていると思う。

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海老坂武『加藤周一』で興味深かったのは、第一に1947年の加藤周一と荒正人との「論争」。1947年、加藤は論文「IN EGOISTOS」で荒正人を批判しているという(pp58-60)。荒正人は戦後初期に、共産党員でありながら(否、本来「あればこそ」?)日本における「個人」や「近代」の意味を最も誠実に追及した人物と思える。荒は自我確立をエゴイズムの正面からの擁護として「肯定」したこともあり、加藤の批判はそれらに向けられている。

それに対して加藤の立場は、「輸入された近代」を否定し、日本で形成された歴史的文化を尊重し、その「伝統の上に立った近代」をめざすという、基本的にバランスのとれたものである。そしてこの(日本の過度な卑下にも近代の過度な讃美にも陥らない)加藤のバランス感覚は、私としては福沢諭吉のそれを彷彿とさせるものだった。

第二に加藤のヒロシマ体験(pp155-8)。米軍に随行して被爆直後の広島に入った加藤は、その後ずっと、ヒロシマに対しては距離をとり、観察者的傍観者的沈黙、判断停止の態度を採ってきた。

海老坂氏はその背景に、①占領軍とともに原爆症調査団に加わった「やましい思い」、②戦後直後の加藤が、(共産党と同様)米軍を解放軍と考えていたふしがある事実、を指摘している。

同じく広島で傍観者的被爆体験をして、それで戦後沈黙だった知識人は丸山真男。戦後啓蒙の二人の代表的知識人が広島について同じ軌跡をたどった意味は、いつか考えてみたい。
                
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本書であらためて加藤の遍歴を追いながら、加藤はいろいろ、「上手くやった」と思う。たとえば、「女」との距離、政党との距離、「日本」との距離など。めんどくさくなると「フランス文化」でけむに巻く。知識人であることは認めるが、同時に、決定的なところで敵を作らず、やや強く言えば「特権的足場」を保った人。

2009年に朝日新聞夕刊「居酒屋のムッシュ・素顔の加藤周一」連載で紹介されていたが、「9条の会」が出来る前、同様のネットワーク設立を立命館の安斎育郎氏が加藤にもちかけると、加藤は「日高さんがいいんじゃないか」といって逃げたという。加藤らしい、いわば政治的護身術と思う。理由は単純、安斎氏とは友好関係を保ちながら、とはいえそこまで深くは(運動組織的には)組めない、と思ったのだろう。私はむしろ、断る口実に名を挙げられた日高六郎の真面目を思う。

加藤周一センセイは、こういう護身術を駆使する/できる人間だったと推測する。丸山が結局党から激しく攻撃されたのと対照的に、加藤はこの点、「上手くやった」。この「処世術」の事実は、少し指摘しておきたい気がする。

それでいてなお、冷戦時代を通じて、ソ連/共産主義に対して加藤が把持した態度は間違いなかったと思う。加藤はいう。

「われわれがどれほど遠く共産主義から離れていても、共産主義が代表的な左翼運動であることは変りはない。そして左翼運動を含まずに、民主主義の進展は考えられないから、左翼運動に対する重大な打撃は、少なくとも間接に、民主主義の全体への打撃にならざるをえないだろう」(加藤の発言、海老坂『加藤周一』p166から孫引き)。

海老坂氏はこの加藤の政治的立場の「論理性」の如何を問うているが、冷戦時代の日本の「知識人」としては、「政治的に正しい」スタンスだったのでは、と思う。
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by akai1127ohi | 2013-05-11 11:24 | 散文 | Comments(0)
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