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Modest Comments on contenporary politics by Akai OHI (Twitter:@AkaiOHI)。
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「The Town I loved So Well/私の愛した街」

新宿に二軒だけ残るうたごえ喫茶、「家路」と「ともしび」。大学入学(2001年)と同時に時代錯誤にも学生運動の人々に関わることになった私が、横井久美子訳で有名な「私の愛した街」を聞いたのは、活動仲間に連れられた「家路」でだった。薄汚れた歌集の一角に素朴な筆致で書かれた、民衆の挿絵を覚えている。

大学二年の春休みにダブリンに語学留学をした。ホーム・ステイ先のホスト・マザーだったシェリーアさんは、料理と掃除(のみ)を自らの職責と考える良妻賢母で、私がコノリー書店で買い漁るトロツキスト系の機関紙を部屋に散らかしておくと、それらを怪訝そうに眺めては、掃除してもいいかと尋ねた。

ある日、新宿で聞いたあの歌を思い出し、シェリーアさんに尋ねた。「私の愛した街」だから ”My beloved town” くらいかなと思い、そんな歌知ってますか?と聞くと、知らないという。しかし、二言三言歌を口ずさんでみると、ひざを打つように、”The town I loved so well” と教えてくれた。今は成人して家を出た息子が、小学生の時に学芸会で歌ったという。

私のダブリン滞在はイラク戦争(2003年3月)と重なった。シャノン空港での反戦活動が組織され、concerned citizen の当然の同時代責務として、私もそれに参加した。シェリーアさんは、「過激な連中に近づくな」と忠告しつつも、ボリュームあるサンドイッチを作ってくれた。

私のダブリン滞在はまた、フィル・コウルターのアルバム、Coulter Classics の発売とも重なり、 Eason & Son で ”The town I loved so well” を視聴することができた。語学学校で知りあった韓国人女学生と一緒に店を訪れ、「韓国でいえば『朝露아침이슬』のような歌だよ」と、知ったかぶり説明したわけだが、あながち間違いではなかったと思う。

横井久美子の訳詩には、三つの「問題」がある。第一に、原詞にある「ball/wall」、「rain/lane」、「youth/truth」といった韻が捨象されていること。第二に、少年時代のデリーを回想して、 ”Past the Jail and down behind the Fountain” という箇所。「煙ただようガス工場」、「失業中の男たち」といった風景描写のなかで ”the Fountain” が一見不釣合いにも思えるが、横井はこれを「共同井戸」と訳していて妙案だ。しかし、デリーには the Fountain という通りもあり、真偽が定かでない。第三に、横井の明らかな意訳(意図的誤訳)は、 ”I can only pray for the bright grand new day” を、「私にできることは一つ戦うことだけなのだ」としている点だ。しかし、原詩の語彙に留意しつつも、なし崩し的な現状追認の前に「異議申し立て」があまりに欠落しているかに思える昨今、むしろこの意図的誤訳の精神は継承したい。

横井久美子の先行訳業に敬意を表しつつ、いつか、私自身の語彙で、この曲を歌ってみたい。

(本文は「日本アイルランド協会会報・July, 2011」に掲載されたものである)







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by akai1127ohi | 2011-08-12 14:43 | 散文 | Comments(0)
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